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育てる人を育てる

 

皆さんの会社は「若手の育成うまくいっていますか?」

ここ数年「明らかに」このテーマでの相談が増えています。「新人が定着しない」「若手が思ったように育たない」そして「育てる人がいない・・・」。

 

中小企業を取り巻く環境はますます厳しさを増し、人と技術の構造変化(パラダイムシフト)を背景に、慢性的な人手不足やさらなる技術革新を求められており、どこも組織経営を継続するために必死な中、政府主導の働き方改革等により、長時間労働是正、女性活躍推進、ハラスメント問題等、従業員の働きやすさの追求も急務とされています。

 

このような環境下において、働く個人の高付加価値化が求められているが、肝心の人材面に目を向けると、採用、定着、育成とどれも課題を感じている企業ばかりです。その根本的な原因はどこにあるのか?「人」の問題か「時間」か「仕組み」か、それ以外なのか。しかし問題を間違えれば、当然答えも処方箋も間違えます。

 

 

新人や若手の育成は、伝統的に先輩社員からのOJT(On-The-Job Training)を中心として、現場で仕事を覚え、その先輩を見ながら共に成長し、自分自身の今後の仕事もイメージする方法をとっています。中にはメンター制度と併用しながら「不安の低減」と「成長プロセスの支援」を「制度として」とっている企業もあります。しかし、終身雇用、年功序列が崩壊している現在では、上司や先輩はプレイングマネージャーと化し自分のことで精一杯。部下の育成を面倒よく見る余裕(時間も人)も減りました。「部下は上司の鏡だ」と言われるように、自分のことで精一杯の上司、先輩を見ている新人はどのように感じるのでしょうか。この会社、この仕事への不安が増して、それが職場への不信不満やがては離職へと繋がっていくケースもあるのではないでしょうか。

 

 

人材の定着・育成にとって、私が特に危機感をおぼえるのは「仕事の意味づけ」の欠如です。仕事を「作業」としか捉えられていない、一歩先を考えた仕事ができない理由の多くは、その仕事の全体像であったり、仕事の意味や意義を理解していないことが大きな原因だと私は感じます。組織内のコミュニケーションの中身と質が圧倒的に変わったということです。

「この会社の理念や考え方に共感している」「この会社が好きだから所属している」といった、ポジティブな組織コミットメントを醸成するには、常日頃の組織コミュニケーションが不可欠なのです。残念ながら「辞めても他にいい働き先がないからこの会社にいる」「ここを辞めると損をする」といったネガティブなつながりで組織に属している人が多いのではないでしょうか。

 

事柄は同じでも、その仕事の意味づけが組織にとっては何よりも重要です。そこに理念や方針、さらには人材に対する期待もが含まれているからです。新人や若手にとって最も重要な社会人としてのファーストステップであるOJTが、本当にそのように進められているのでしょうか。多様な価値観がイノベーションを起こすための前提条件ですが、今はその多様性の悪い部分が強調されているように見えます。要は関係性が希薄なのです。

 

多様性の時代には、違いを認めつつ方向性を共にするための「対話」こそが、最も重要な関わりであり組織コミュニケーションの肝なのです。若手との関係性を築くためにも基本的態度を見直し、その場その場での上司・先輩の対話力の開発!まさに「育てる人を育てる」ことが若手育成のカギだと言えます。